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【新NISA・iDeCo】非課税枠は年々縮小している【インフレのステルス減量】

いきなりだが、ポテトチップスの話をしたい。

袋の大きさも値段も変わっていないのに、いつの間にか中身が減っている。シュリンクフレーション、通称ステルス値上げというやつだ。あれを見るたび、守銭奴の血が騒ぐ。

で、本題。あれと同じことが、新NISAとiDeCoの非課税枠でも起きている。

新NISAの生涯投資枠は1,800万円。去年もそうだったし、今年もそうだ。数字は1円も変わっていない。が、である。インフレで物価が上がるほど、1,800万円で買えるものは減っていく。つまり、枠の見た目は同じでも、中身は毎年こっそり痩せている。

先に結論を言っておく。非課税枠は、名目では据え置きでも、実質では年々縮小している。だから、使える枠は価値が高いうちに、さっさと使い始めた方がいい。今回は、この「枠のステルス減量」がどれくらい進んでいるのか、公的データで計算してみた。

枠の数字は、2024年から1円も動いていない

まず制度のおさらいから。新NISAの非課税枠は、年間360万円(つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円)、生涯で1,800万円。2024年のスタート以来、この金額は据え置きだ。

「いや、NISAは拡充されてるだろ」という声もあるはず。その通りで、2026年度の税制改正では、0〜17歳が使えるこどもNISA(年60万円・上限600万円、2027年開始予定)の創設などが決まった。制度としては、むしろ育っている。

ただし、である。大人ひとりの枠、つまり年360万円・生涯1,800万円という金額そのものは、一切いじられていない。物価がどれだけ上がろうと、だ。

iDeCoはどうか。こちらは2027年1月の引き落とし分から、拠出限度額の引き上げが決まっている。私のような学生や自営業者などの第1号被保険者は、月6.8万円から7.5万円へ。企業年金のない会社員は月2.3万円から6.2万円へ。おお、増えるじゃん。めでたし。

……と言いたいところだが、この引き上げ、あとで計算すると景色が変わる。少し待ってほしい。

物価はしっかり上がった

次に、インフレ側の数字を見る。総務省の消費者物価指数(2020年=100)によると、2026年5月時点の総合指数は113.5。つまりこの5年半で、物価はおよそ13.5%上がった。

2025年の1年間だけでも、平均で前年比プラス3.2%。直近の2026年5月は前年比プラス1.5%と少し落ち着いてきたが、日銀が目指しているのは2%の物価上昇が続く世界だ。つまり、これからも毎年じわじわ上がっていく前提で生きた方がいい。

物価が上がるということは、裏を返せば、お金の価値が下がるということ。1,800万円という数字が固定されたまま物価だけが上がれば、その枠で買えるものは確実に減る。ここまでは理屈の話。では、実際いくら減ったのか。

実質でいくら縮んだか、計算してみた

ここからは私の試算だ(総務省の指数をもとに計算。前提は文末に記載)。

新NISAが始まった2024年の物価を基準にすると、2026年5月までに物価は約4.4%上昇した。ということは、1,800万円の枠の実質的な価値は、開始からわずか2年半で約76万円分、目減りした計算になる。

76万円。私の年間生活費の半分以上が、何もしていないのに枠から蒸発した。誰にも気づかれず、静かに、である。ステルスにも程がある。

年間360万円の枠も同じだ。物価が年2%上がる世界では、来年の360万円は今年の約353万円分の価値しかない。毎年7万円分ずつ、枠が軽くなっていく。3%なら毎年10万円分だ。

生涯枠1,800万円で長期のシミュレーションをすると、もっとえぐい。年2%のインフレが続いた場合、10年後の1,800万円は今の約1,476万円分、20年後には約1,211万円分の購買力しかない。年3%なら、20年後は約1,000万円分。名目は1,800万のまま、実質はほぼ半減である。

「若いうちから焦らなくても、枠は逃げない」とよく言われる。確かに枠は逃げない。ただ、痩せる。じっとしているだけで、確実に。

iDeCoの引き上げも、インフレに追いついていない

さて、先ほどのiDeCoの話に戻る。第1号被保険者の枠は月6.8万円から7.5万円へ、率にして約10%の引き上げだ。太っ腹に見える。

だが、思い出してほしい。2020年からの物価上昇は約13.5%だ。つまり、2020年の6.8万円と同じ購買力を持つには、今や約7.7万円が必要になる。7.5万円に引き上げても、まだ届いていない。上がったのに、実質では昔の水準を下回ったまま。これが実態である。

(フェアに言っておくと、企業年金のない会社員の枠は2.3万円から6.2万円へ約2.7倍で、これはインフレを差し引いても大幅な拡大だ。会社員は素直に喜んでいい。羨ましい。)

そして、ここが構造的な問題なのだが、日本の非課税枠には物価に連動して自動で増える仕組みがない。米国の401(k)やIRAといった同種の制度は、物価などに応じて毎年上限が見直される。日本は、たまの法改正で思い出したように引き上げられるだけ。次の改定までの間、枠は再びじわじわ痩せ続ける。

ちなみに学生への注意をひとつ。学生納付特例で国民年金の支払いを猶予してもらっている人は、そもそもiDeCoに加入できない。学生とiDeCoは、実はあまり相性が良くない。学生はまずNISAから、が定石だと思う。

枠は待ってくれない

ここまでの話を踏まえて、私の結論はシンプルだ。使える枠は、価値が高いうちに使い始める。

同じ100万円を枠に入れるなら、枠の実質価値が目減りする前、つまり今日に近いほどいい。もちろん、これは「借金してでも埋めろ」という話ではまったくない。生活費と学費には手をつけない。ここはいつも通り、私の絶対のルールだ。余った分を、淡々と入れる。それだけである。

そしてもうひとつ。インフレの世界では、現金だけを抱えて座っているのも、それはそれでリスクだ。枠が痩せるのと同じ理屈で、現金も痩せる。持たざるリスクの話は前にミニマリストの記事で書いたが、非課税枠も同じで、「使わないこと」にもコストがある時代になった、ということだと思う。

念のため、反対側にも触れておく。インフレが収まれば目減りのペースは緩むし、仮にデフレに戻れば枠は実質的に膨らむ。制度側も拡充が続いているから、将来、枠の金額自体が引き上げられる可能性もゼロではない。ただ、それを待つ間も物価は動く。少なくともここ数年の現実は、「待った人から順に、枠が痩せていく」だった。

見た目は同じ、中身は減る

ポテチの内容量は、袋を開けるまで減ったことに気づけない。非課税枠も同じで、数字だけ見ていると減っていることに気づけない。せめて気づいた私たちだけでも、枠が元気なうちに、淡々と積み立てようではないか。

私は今月も、S&P500に5万円。それだけである。

※本記事の物価データは総務省「消費者物価指数」(2020年基準、2026年5月分まで)に基づきます。実質価値の試算は、指数をもとにした筆者の計算です(将来のインフレ率は年2%・3%と仮定した場合の例示であり、将来を保証するものではありません)。NISA・iDeCoの制度内容は執筆時点の情報で、今後変更される可能性があります。最新の内容は金融庁・厚生労働省等の公式情報をご確認ください。本記事は特定の金融商品の購入を推奨するものではなく、投資には元本割れのリスクがあります。最終的な判断はご自身の責任でお願いします。

参考文献・データ出典

※数値・制度は執筆時点(2026年7月)のものです。改定される場合があるため、最新は各公式サイトでご確認ください。

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