理学療法士国家試験。
この文字を見ただけで胃がキュッとなる養成校生は多いはずだ。出題範囲は解剖学から運動学、内部障害、神経まで広すぎるし、覚えることは膨大。おまけに落ちれば1年棒に振るというプレッシャー付き。我が大学院生活でも、あの追い込み時期の殺伐とした空気は今でも思い出せる。
そんな地獄の国試対策に、ここ数年で新たな選択肢が現れた。そう、AIである。ChatGPTをはじめとした生成AIが当たり前に使えるようになった今、「これ、国試勉強に使えるんじゃね?」と考えるのは自然な流れだ。
というわけで今回は、現役寄りの目線で「理学療法士国家試験の勉強にAIは本当に役立つのか」を検証してみた。
結論から言うと、使える。ただし使い方を間違えると普通に沼る。このあたりの温度感を、メリット・デメリット両面から正直に書いていくので、最後までお付き合いいただきたい。
AIは「最強の家庭教師」になりうる。が、丸投げは厳禁

先に全体像を示しておく。AIは国試勉強において、めちゃくちゃ優秀な家庭教師になる。24時間文句も言わず、どんな初歩的な質問にも秒で答えてくれる存在だ。バイトで疲れて誰にも質問できない深夜でも、スマホ一つで「先生」が出てくる。これは独学勢にとって革命的にありがたい。
ただし、この家庭教師には致命的な弱点がある。しれっと嘘をつくのだ。
詳しくは後述するが、この一点を理解しているかどうかで、AIが武器になるか足を引っ張るかが決まる。では具体的に見ていこう。
AIが得意なこと(メリット編)
ここからはAIをつかう利点。
① わからない問題を「噛み砕いて」解説してくれる

過去問を解いていて一番ストレスなのが、解説を読んでも意味がわからないときだ。教科書的な解説って、わからない人向けに書かれてないことが多い。専門用語を専門用語で説明するという無限ループ。
ここでAIの出番。
と頼めば、レベルを落として噛み砕いてくれる。さらに
「なんでこの選択肢が違うの?」
と食い下がっても、嫌な顔ひとつせず答えてくれる。わかるまで質問できるというのは、独学において想像以上に強い。
具体例を挙げよう。たとえば「腕神経叢がどうしても覚えられない」みたいな鬼門があるとする。教科書を見ても枝分かれが多すぎて頭がパンクするやつだ。これをAIに
「腕神経叢の構成を、根・幹・束の順番でイメージしやすいように説明して」
と投げると、構造をストーリー仕立てで整理してくれたりする。さらに「じゃあ正中神経はどの束から出る?」と一問ずつ詰めていけば、対話しながら理解が深まっていく。この「自分のわからないポイントにピンポイントで切り込める」感覚は、参考書を黙々と読むのとは別物だ。
② 語呂合わせ製造機として優秀

国試は暗記ゲーの側面がデカい。筋肉の起始停止、神経支配、検査値の基準値……覚えゲーは避けて通れない。
そんなとき、AIに「○○を覚える語呂合わせ作って」と投げると、いくつも候補を出してくれる。正直クオリティはピンキリだが、「自分で考えるより早い」のは間違いない。気に入ったものを採用し、ダサいものは却下する。この取捨選択をするだけでも記憶に残るので、案外バカにできない使い方だ。
③ 苦手分野のまとめ役になる

「呼吸器の内部障害が全然頭に入らない」みたいな苦手分野ってあるよね。そういうとき、AIに「理学療法士国試レベルでCOPDのポイントを表でまとめて」と頼むと、要点を整理してくれる。
自分でゼロからまとめノートを作る時間がない人にとって、たたき台を一瞬で出してくれるのは時短になる。出てきたものをそのまま信じるのは危険だが(後述)、整理の出発点としては優秀だ。
④ スキマ時間の壁打ち相手になる

通学中の電車、バイト前の待ち時間。こういうスキマ時間に「股関節の運動で働く筋肉、一問一答形式で出して」とお願いすれば、即席のクイズ大会が始まる。参考書を開く気力もない移動中でも、口頭ベースでサクッと復習できるのはありがたい。
AIが苦手なこと(デメリット・注意点編)

ここからが本題と言ってもいい。メリットだけ見て飛びつくと痛い目を見るので、しっかり読んでほしい。
① しれっと嘘をつく(ハルシネーション)

冒頭でも書いたが、これが最大の落とし穴だ。AIは「それっぽい嘘」を堂々と言ってくる。検査値の基準値を微妙に間違えたり、存在しない分類を作り出したり。しかも自信満々なので、知識のない状態だと見抜けない。
国試は1点が合否を分ける世界。AIの言うことを鵜呑みにして間違った知識を覚え込むのは、勉強しているつもりで遠回りする最悪のパターンだ。AIの回答は必ず教科書や過去問の正答と照らし合わせる、これは絶対に守ってほしい。
例を挙げよう。例えばAIに
「国試っぽい問題作って」
とお願いすると、それっぽい問題を量産してくれる。だが、問題は作れても、正解が間違っていることがある。それが下記で

……いや、違う。上腕二頭筋は筋皮神経支配だ。解剖を勉強した人なら秒で気づくミスだが、もし知識ゼロの状態でこれを「へえ、橈骨神経なんだ」と覚えてしまったら目も当てられない。自分で作った勉強ツールに、自分が騙されるという地獄である。
他にもあったハルシネーション
- 基準値の捏造:「成人の安静時心拍数の正常範囲は40〜60回/分」みたいに、それっぽいけど微妙に違う数値を堂々と提示してくる(正しくは60〜100回/分)
- 存在しない分類を作る:ブルンストローム・ステージを「全7段階」と説明してくる(正しくは6段階)。ステージ数を勝手に盛るな
- 古い情報を最新と偽る:改訂されたガイドラインの旧基準を、さも現行のように語る
- 「2つ選べ」問題で1つしか出さない:複数選択のひっかけに弱く、設問形式すら無視することがある
共通するのは、全部自信満々だということ。AIは「たぶん違うけど」とは言ってくれない。だからこそ、AIが作った問題の答えは過去問や教科書で必ず裏取りする。これに尽きる。
② 国試の「正答」を間違えたことがあった

過去問の問題文をそのまま貼り付けて「答えは?」と聞くと、わりと普通に間違えてた。特に「正しいものを2つ選べ」みたいな複数選択や、ひっかけ問題に弱い。
なので、AIに過去問を解かせて答え合わせするという使い方はおすすめしない。あくまで正答は公式や過去問解説で確認し、AIには「なんでその答えになるのか」の解説役に徹してもらうのが正解だ。
③ 画像問題には基本的に弱い

レントゲン、心電図、運動学の図……国試には画像を読み取る問題もそこそこ出る。画像を読ませる機能もあるにはあるが、専門的な医療画像の判読精度はまだ信用しきれない。このジャンルは素直に参考書と過去問で戦うべきだ。
おまけ:結局どのAIを使えばいいの?

「AIって言われてもどれ使えばいいのよ」という人もいるだろう。ざっくり言えば、まずは無料で使えるChatGPTあたりから始めれば十分だ。国試レベルの質問なら無料版でもそこそこ戦える。
もっと精度や使い勝手にこだわりたいなら有料版や他社のAIもアリだが、正直、最初から課金する必要はない。まずは無料で触ってみて、「これは勉強がはかどるぞ」と実感してから検討すればいい。我が貧乏学生の財布事情的にも、いきなり課金は推奨しない。タダで試せるものはタダで試すべきだ。
ちなみにスマホアプリ版を入れておくと、移動中の壁打ちがめちゃくちゃ捗る。音声入力で質問を投げられるので、歩きながらでも復習できてしまう。スキマ時間を制する者が国試を制す、とまでは言わないが、塵も積もればという話である。
ちなみに私は有料版を使っていました。ある程度制度を上げられるのと、会話制限になりづらいのが想像以上に良いからです。
実践:AIを使った国試勉強ルーティン例

具体的なイメージが湧くように、AIを組み込んだ勉強の流れを一例として書いておく。
1. まず過去問を自力で解く(ここは絶対にAIに頼らない)
2. 答え合わせは公式・過去問解説で行う(AIにはやらせない)
3. 間違えた問題、解説を読んでもわからない問題だけAIに投げる
4. AIの解説を読んで、それでも怪しい数値や分類は教科書で裏取りする
5. 覚えにくい暗記項目はAIに語呂合わせを作らせてストックする
6. 移動中などのスキマ時間に一問一答形式で壁打ちして定着させる
ポイントは、1と2を絶対にAIに任せないこと。ここを任せた瞬間、嘘の正答を覚えるリスクが爆増する。AIはあくまで「3以降の補助」。この線引きさえ守れば、勉強効率はかなり上がるはずだ。
ここまで読んでくれた人ならもうわかると思うが、答えはシンプル。
勉強の軸はあくまで過去問。AIは解説の補助輪として使う。
国試は過去問の焼き直しが多い試験だ。だから王道は変わらず「過去問をひたすら回す」。これが幹。AIはその幹に対して、「わからないところを噛み砕いてもらう」「暗記を手伝ってもらう」という枝葉の役割で投入する。この順番を間違えて、AIを幹にすると沼る。
逆に言えば、過去問という確かな軸さえブレなければ、AIは独学勢の心強い相棒になる。質問し放題の家庭教師を無料〜数千円で雇えると考えれば、使わない手はない。
安くしたいならリハドリルでいいとおもう

ここまでいろいろ書いたけど、一周回ってリハドリルもいいかなと思う。何より実績があるし、それなりに安く利用できる。養成校で一括申し込みしているところが多いらしいし、先生の流されるままでもOK。但し、これはひたすら問題に答えるだけのアプリなので、使うとしたら無料版AIに分からないことを聞く+リハドリルで問題消化の組み合わせが良い。有料版AIを使うよりは安い。
まとめ:AIをてなづける素養が求められる

理学療法士国家試験の勉強にAIが使えるか、という問いへの答えはこうだ。
- 使える。ただし丸投げは厳禁
- 得意なのは「解説の噛み砕き」「語呂合わせ」「苦手分野の整理」「スキマ時間の壁打ち」
- 苦手なのは「正確性(嘘をつく)」「過去問の正答」「画像問題」
- 軸は過去問。AIは補助輪として使うのが鉄則
道具は使い方次第で薬にも毒にもなる。AIもまさにそれだ。正しく付き合えば、孤独になりがちな国試勉強の最高の相棒になってくれる。これから国試に挑む人の参考になれば幸いだ。
健闘を祈る。
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